着ぐるMIX 見本 

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■「モウソウジャンクション」イントロ

 

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■「CHIBI KISS」イントロ


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■「CHIBI KISS〜その後の二人〜」イントロ

■ちびキスその後

 その夜、ツナはベッドに入ってかれこれ一時間は経つというのに、なかなか寝付けないでいた。
 夜間灯の薄暗いオレンジ色に包まれた同じ部屋では、リボーンがハンモックで身じろぎもしないほど熟睡している。リボーンの寝息や枕元に置いた目覚まし時計の秒針、昼間なら聞こえない遠くにある遮断機の音などを意識するたび、(早く眠らなきゃ明日は学校なんだし)と思えば思うほど目が冴えてしまう。
 ツナは何度目か分からない寝返りを打って深いため息をついた。何故眠れないのか、原因があるとしたら一つだ。
 昼間、数学の宿題を片付けるために来てもらった獄寺が以前の後遺症で小さくなってしまい、そして――
(キス……された)
 まさか獄寺にそんなことをされるだなんて、未だに夢だったのではないかと思う。
 獄寺は女の子にモテモテでツナから見ても外見は文句なしにカッコイイ。しかし、当人は異性からのアプローチを鬱陶しがるばかりで、口を開けば『十代目十代目』の毎日だ。
 獄寺が何を置いてもツナ優先なので、さすがに少しばかり勘違いしたり変な期待をしたことがなかった訳ではない。その度ツナは(獄寺君はオレが十代目になるって思ってるからなんだ。部下だと思ってるからだぞ)と自戒して、むしろ獄寺の言動に深い意味はないのだと思いこむようにしていた。でなければ、はっきり思い違いだと気付いたときに恥ずかしいからだ。
 そうやって今まで何度も(気のせい気のせい獄寺君はこーゆー人だもん)とやり過ごしてきたというのに、キスされたせいでこれまで否定していた獄寺の行動原理を全て肯定されたような気がして、どうしたらいいのか分からない不安な気持ちが渦巻いている。
 獄寺が自分に恋愛感情を持っていると思うのはやはり自惚れていると思うし、獄寺に対して失礼だとも思う。しかし、ツナは自分に置き換えて考えると同性にキスするだなんて、同性でなくともキスだなんて、相手に対してよほどの愛情がなければ無理だと思うのだ。そもそも普段からツナを崇め奉る勢いの獄寺が、ツナに嫌がらせのたぐいでキスをするはずがない。
 だからどうしても考えつく理由は、『好き』という何とも不確かな感情なのではと思ってしまう。
 けれど、獄寺は一言もツナに『好きだ』とは言わなかった。ビアンキのせいで倒れ、ツナのベッドで休んだ後はいつものように『お手を煩わせてすみません』とぺこぺこ頭を下げて、逃げるようにいなくなってしまった。
 枕には獄寺が愛飲している煙草とヘアワックスらしき香料が混じって、(獄寺君だー)と思う匂いが残っている。普段はさほど意識もしないし、今まで倒れた獄寺を介抱するために寝かせたことなど何度もあって、そのあとのベッドで眠るのも初めてではないのに、妙にドキドキしてしまう。
(……あの時リボーンとビアンキが帰ってこなかったら……、オレ、どうなってたんだろう……)
 小さな姿から元に戻った獄寺にのし掛かられたまま、気付けば唇を塞がれていた。初めてのキスは呆気にとられてそれこそ何が起こったのか分からなかった。再び今度は激しく唇を押しつけられた上に抱きしめられてやっと、ツナは(どうしちゃったの獄寺君!?)と意識出来て身を硬くしたのだ。
 触れ合った獄寺の唇と身体は熱くて、瞬間的にその熱が自分へ飛び火したのを覚えている。反射的に目を閉じてしまったので、その時獄寺がどんな顔をしていたのかは分からない。
(……唇どうしがくっつくのって気持ちいいんだなぁ……)
 獄寺の唇の感触を生々しく思い出し、ツナは頬を赤らめた。最初にキスされた時、獄寺の真剣な顔が近づいてきて柔らかい物で触れられた。ビックリしたし、獄寺が何のつもりでそうしたのかを考えると不安にもなるが、気持ち悪いだとか、裏切られただとか、獄寺に対してマイナスの感情は少しも湧いてこなかった。
 むしろますます(獄寺君はオレのことが好きなのかなぁ)なんて、思い上がり半分と期待半分な予想ばかりしてしまう。
 ツナは獄寺が好きだ。と言っても憧れの女の子、笹川京子とはちょっと違う意味の『好き』で、京子に対してはいつもその笑顔を思い出すだけで暖かい嬉しい気持ちになるのに、獄寺には困ったり泣きそうになったり実際泣きを見たり、単純に『好き』とは言い難い気持ちがある。
 でも、一緒にいて楽しい時は多いし、自分が『十代目』にならなかったとしてもずっと近くにいてくれたらいいなと思うのだ。
(それって結局オレは獄寺君を好きってことなのか? 恋愛対象として、京子ちゃんよりも?)
 考えれば考えるほど自分の気持ちが分からなくて、ツナは(もういい加減考えるのはやめよう)と羊の数を数え始めた。



 その後、いくらかはうとうとしたのだけれど深い眠りには就けなくて、ツナはいつもよりかなり早くに目が覚めた。どうせだから早めに学校へ行って、やっていない数学の宿題を誰かに見せて貰おうと家を出ると、いつからそこにいたのか、獄寺が門柱の影になる場所で待っていた。
 

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■「HAPPY LIFE」イントロ


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■「PROMISE 〜HAPPY LIFEその後の話〜」イントロ

 
「さいきん獄寺君がおかしいんだよね……」
「あいつがおかしいのはいつもじゃねーか」
 ツナがこの一週間悩み抜き意を決して相談を始めたのに、黒衣の家庭教師は素っ気ない。ツナの方向を見もせず手元の銃を磨き続けている。
 確かに獄寺は普段から思いこみが激しく一直線で、ツナは何度となくトラブルに巻き込まれ不本意なとばっちりを被ってきた。そんな「常識人でないおかしさ」はリボーンに言われるまでもないのだが、むしろそれとは逆のことなのだ。
「この一週間、すぐ帰っちゃうんだよ。前なら学校帰りに特に用事がなくても――宿題教えてくれて助かることもあるけど――オレの部屋に上がりたがって、ランボとケンカなんてしょっちゅうだったのに。お前なにか知らない?」
「オレが知るわけないだろう」
「だってさ。ボンゴレ関係の――極秘任務であるとか、そんなことはないの?」
「知らねーな。そんなに気になるのなら本人に聞きやがれ」
「何度も聞いてるけど教えてくれないんだって!」
 ツナとてこの一週間なにもせずにいたわけではないのだ。獄寺はツナが声をかけるとあからさまに読んでいた本を隠して秘密を匂わせながら「なんでもありません」と笑顔を作り、「ご心配には及びません」と微妙に距離を保とうとしている。しかし、獄寺が早くに帰った家でなにかをしているのかは確実で、日ごとに目の下のくまが濃くなり憔悴し、授業中爆睡していたかと思えば別の日は熱心に本を読みふけりぶつぶつ独り言を言っている。
 狂人的オーラを放つ獄寺に注意できる教師がいるはずもなく、獄寺に恋心を持っているクラスの女子は遠巻きに見つめるしかできない。その結果、ツナの元には不良ながらも成績は良い獄寺を心配した教師やクラスの女子がやってきて、理由を聞いたり改善方法を得ようとしたりする。獄寺の様子が変な理由を知りたいのはツナも同じで、いちいち「知らない」「分からない」と答えるのも数が増えれば面倒だ。しかもそのたび女子からは「役立たず」と罵られたりして理不尽な思いをする。
「あーもう。獄寺君の考えてることなんて分かるわけないよ」

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■「CHIBI CHIBI」イントロ

 
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■「スペシャルハッピー」イントロ



 ナミモリに住む綱吉と、ナミモリの隣にあるチュウモリの領主の息子、隼人はとても仲良しです。今日も綱吉は学校のあと「森」へやって来て、隼人と出来たばかりの秘密基地で遊んでおりました。
 そろそろ日も傾き始め帰りの時刻になった頃、隼人がなにやら神妙な顔で告げました。
「オレ、明日は用事があってここにはこれないんです」
「ようじってなに?」
 明日は休日なので、いつもなら二人は長い時間一緒に遊ぶのが常なのですが。
「明日はオレのたんじょう日なので……。家でそのお祝いパーティーがあるんです」
 隼人は小さな声で表情も暗く、楽しく無さそうです。
「あしたごくでら君のたんじょう日なんだ! ゴメン。オレおいわいのプレゼントなにもよういしてないや」
「そんなの当然ですよ。お気になさらないでください」
「……なんでごくでら君、つまらなそうなの?」
 綱吉にとって自分の誕生日の前日ともなれば、好物の料理が食べられたり欲しかったオモチャが貰えたりするのだと、それはそれは嬉しい気持ちでいっぱいの所です。それなのに隼人は綱吉と遊んでいた時と全く違い表情が曇っていました。
「あっ、すみません。オレはたんじょう日がイヤなんじゃなくて、パーティーでどうでもいい奴らにあいさつしたりピアノひいたり、そーゆーのがめんどくて。しかもそのせいで沢田さんとあそべないし……」
「そっかあ。オレもごくでら君とあしたあそべないのはさみしいな」
「すみません」
「ううん。じゃあまたあさってだね!」
「はい。あさってにまたあそびましょう!」
 二人は名残惜しく手を振り合いさよならをしました。





「あしたごくでら君のたんじょう日なんだって!」
「まあ、そうなの」
 家に帰った綱吉は早速お母さんに報告しました。そして帰り道であれこれ考えていたことを聞いてみました。
「いまからプレゼントってつくれるかなあ?」
 明日は会えないので明後日に手渡すとして、今夜と明日でプレゼントを手作りするなんて、ぶっきちょの綱吉には途方もないことに思えます。けれど、綱吉は隼人に喜んで貰える様なプレゼントを、出来れば手作りしたいと考えていたのです。なにしろ隼人は領主様の子どもです。きっと明日のパーティーで高価だったり珍しかったりするプレゼントをいっぱい貰うはずなのです。綱吉の少ないおこづかいでは大した物は買えません。隼人は綱吉が用意したプレゼントが安い物だったとしてもガッカリしたり粗末に扱ったりはしないでしょうが、お金が無い分手作りして気持ちを込めたいと思ったのです。
「そうねえ……」
 綱吉の不器用さを誰よりも分かっているお母さんはうーんと悩みました。綱吉はお箸もエンピツも正しく持てませんし、当然字も汚ければ絵も下手です。ハサミも上手く使えませんし飽きっぽいところもあります。手作りのプレゼントなど、一日で作ろうというのは無謀だと思いました。でも、お母さんは綱吉がやれば出来る子だと知っています。明日一日頑張れば何とかなるかもしれません。なにしろ綱吉と一番仲が良くて大好きな獄寺君の為なのですから。
 あれこれ考え中のお母さんを見上げている綱吉は不安そうな表情です。本人も作りたいけど作れるんだろうかという、相反する気持ちでいっぱいなのでしょう。
 お母さんは安心させるためににっこり笑いました。
「じゃあ、お母さんもちょっぴり手伝ってあげるから、ツー君も頑張って作ろうね!」
「うんっ!」

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□20101005 up